抄録
【はじめに】深在性トリコスポロン症は予後不良な真菌感染症の一つである。本症の主たる起因菌は世界的にTrichosporon asahiiである。タイにおける全病原性酵母に対する本菌の分離比率はおおよそ2-8%である。この度は、タイ患者から分離されたT. asahiiの遺伝子多型と薬剤感受性性について検討した。【材料および方法】タイ患者から分離された101株を用いた。rRNA遺伝子中のIGS1領域のDNA塩基配列を解析することにより遺伝子型を決定した。また、AMPH-B, 5-FC, MCZ, ITCZ, FLCZ, ITCZおよびVRCZのMICをCLSIに準拠して測定した。【結果および考察】T. asahiiのIGS1領域には7つの多型が存在する。101株中、I型が45%、III型が35%、VII型が18%であり、II型およびIV型が数%であった。日本人由来株の主要遺伝子型がI型であるのに対し、米国ではIII型であることからタイでは独自の遺伝子型比率を構成することが示された。また、AMPH-B、5-FCおよびFLCZには低感受性あるいは耐性を示した。VRCZが最も感受性が高かった。[会員外共同研究者]Tussanee Lrodkaew, Natteewan Poonwan