音楽知覚認知研究
Online ISSN : 2434-737X
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一流ピアニストの打鍵動作における相互作用トルクの利用
古屋 晋一 木下 博
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2007 年 13 巻 p. 1-7

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抄録

本研究では,熟練ピアニストとピアノ初心者の,ピアノ打鍵動作における上肢関節の動力学特性の違いについて調べた。ピアニスト7名と同数のピアノ初心者に右手親指小指を用いてのスタッカートでのオクターブ打鍵を4段階の音量で打鍵させ,その際の上肢の運動を2次元高速カメラによって記録した。計測した運動データを用いて逆動力学計算を行うことにより,肩,肘,手首関節における「筋肉によって作り出されるトルク(筋トルク)」と「運動依存性のトルク(相互作用トルク)」を算出した。その結果,全ての音量域で,ピアニストはピアノ初心者に比べて肘と手首により大きな相互作用トルクを作り出していることが明らかとなった。また,これらの関節における筋トルクは,ピアニストの方が初心者よりも小さな値を示した。したがって,ピアニストは長期的な運動訓練を通して,相互作用トルクを効果的に利用することで打鍵時の筋肉の仕事量を軽減する打鍵運動技術を獲得していることが示唆された。

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© 2007 日本音楽知覚認知学会
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