大都市の公共空間で週末に開催される、外国名や地域名を冠した祭り(総称して「国フェス」)の活性化はグローバル化に伴う社会現象のひとつと言えよう。本論は、様々な国フェスの共通点である、「その国らしさへの接近」がどのように実践されているかをディスコースの視点から探求することを目的とする。これまで実施した15 の国フェスでの実地調査から、本稿では東京都の増上寺で開催されたミャンマー祭りを取り上げる。ミャンマーのモノ・コトについて肯定的な評価を含む2つの事例(写真展、スキンケア体験)について、発話出来事間のつながりに着目するWortham & Reyes(2015)版のディスコース分析を行った。その結果、「自然」と「不変性」というミャンマー像のディスコースに重複が見られた。この重複により、「自然、不変性」のディスコースを安定させ、強化する側面が見出される。他方で、スキンケア体験において「美容」のディスコースが、「不変性」から「変化」へと動的なディスコースを呼び込む転換点として機能していることが見出された。ここから、国フェスの場は、「今、ここ」にはないディスコース(静的なディスコース)の共有と、その場で流通しているディスコース(動的なディスコース)が接点を作り出すことで活気を生み出していることが示唆された。