多文化関係学
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日本で就職した元留学生外国人社員の職場での経験に関する質的調査
多様性の相互受容がもたらす多文化協働の可能性
井上 美砂
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2021 年 18 巻 p. 21-36

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抄録
本稿の目的は、日本で就職した元留学生外国人社員の日本の職場での経験と、彼らと組織、およびそこで働く人々との相互への影響を明らかにすることである。調査の方法は、半構造化インタビューを実施し、得られたデータを構成主義版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Charmaz, 2006,2014)を用いて分析した。本研究の研究協力者は、日本での留学を経て日本で就職した20代から40代の男女8名である。分析の結果、(a)職場の環境によって元留学生外国人社員の経験が大きく異なっていたこと、(b)外国人社員の価値観や働き方が職場の体制や組織文化に影響を与えていたこと、(c)日本人や日本の社会の良い部分を自らの行動規範に取り入れていたことが示された。これらの結果から、元留学生外国人社員の日本の職場への適応を促進する要素として、職場環境の影響が大きいことがわかった。加えて、元留学生外国人社員と日本人協働者および組織の体制や風土は相互に影響を与え合い、双方にポジティブな変化をもたらしていたことも示された。この結果から、多様性の相互受容がもたらす多文化協働の可能性が示唆された。
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