多文化関係学
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インターネットを活用した異文化間の協働を促す学習環境デザイン : 実践共同体の組織化の視座から
岸 磨貴子今野 貴之久保田 賢一
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2010 年 7 巻 p. 105-121

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抄録

本研究の目的は、インターネット上での異文化間の協働を実践共同体の枠組みで捉え、実践共同体が組織されるプロセスを明らかにすることで、異文化間の協働を実現する学習環境デザインのための要件を提示することである。日本とシリアの児童・生徒が、協働して物語を創作する実践を研究事例とし、実践共同体を構成する3つの次元である「共同の事業」「相互の従事」「共有されたレパートリー」が組織されるプロセスを明らかにする。本事例における「共同の事業」とは、絵本の共同制作である。また、絵本を完成するために、児童・生徒が協働し、相互に助け合うことを「相互の従事」とし、その中で、絵本を創作するために必要な計画の立て方、物語の書き方、表現などを「共有されたレパートリー」と捉える。日本とシリアの児童・生徒の学習記録とフィールド調査で得たデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析した。その結果、児童・生徒は、協働が不可欠な状況において、物語制作に相互に従事し、物語の作り方、コミュニケーションの方法、協働で創作する意味などのレパートリーを共有した。3つの次元の組織化のプロセスから、インターネット上での異文化間の協働を促すためには、協働が不可欠な課題の設定、学習者間の相互従事を促すための支援のデザイン、学習者間の協同的学習を促す自由度と枠組みの設置という3つが学習環境デザインのための要件として提示できた。

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© 2010 多文化関係学会
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