抄録
本研究の目的は,キャリア初期看護師の職業的一人前度に影響する要因を明らかにし,看護の人材育成のための教育的示唆を得ることである.大学病院1施設に勤務する696名の看護師を対象に,職業的一人前尺度(9因子,45項目,5段階リッカート法)と看護師の経験学習のカテゴリー(経験10要素,知識・スキル8要素)について質問紙調査を実施し,回答が得られた363名(回収率52.2%)のうち,無回答または誤回答が1つもない322名(有効回答率88.7%)の中から,臨床経験1~5年の看護師126名を分析対象とした.多重ロジスティック回帰分析(変数増加法,尤度比)の結果,キャリア初期看護師の職業的一人前度に影響する臨床での経験学習の要素は,経験では,職場での指導的役割,患者の急変・死亡,困難な仕事の達成・業務の改善,先輩からの指導であった.知識・スキルでは,看護観,メンバーシップであった.キャリア初期看護師の職業的一人前度の向上は,難易度の高い経験から学習した内容と他者との関わりに強く影響されるため,困難な状況の経験を看護師同士で語り合い,相互作用によって内省的観察を抽象概念化させること,つまり,看護観を醸成する支援が必要であることが示唆された.