抄録
入院中の低ADLの高齢者を対象にした,腹臥位療法の効果については,精神機能と身体機能の改善など多岐にわたり報告されている.今回は,毎日腹臥位療法が実施できない状況にある在宅療養中の寝たきり療養者を対象に腹臥位療法を実施し,その精神機能および身体機能への効果について明らかにすることを目的とする.
約5年間の療養生活で徐々に自発語が聞かれなくなった80歳代の寝たきり高齢者を対象に,週2~3回,合計14回,1回につき5~10分の腹臥位療法を実施した.腹臥位療法を開始した翌日から日中に覚醒している時間が長くなり,自発語が増え,周囲の状況にあった発言が聞かれるなど精神機能の改善がみられた.腹臥位療法の実施中,実施後のSpO2が有意に上昇し,1回の排便量が増加する傾向がみられたがADLの改善はみられなかった.