抄録
本研究は,嚥下障害をもつ脳血管障害患者に対し,新たに考案した含嗽に代わる口腔ケアの有用性を検討するためのパイロットスタディである.考案した口腔ケアは,口腔内清拭 (ブラッシングと拭き取りを行う) に加えて,口腔内の洗浄を行うものである.口腔内洗浄は,スポンジブラシと吸引チューブをガーゼで合わせ,スポンジブラシに水を含ませたあと,吸引チューブを吸引器と接続し,洗浄 ・ 吸引する手順で行った.口腔ケア時の患者の体位は半座位で45°側臥位,頸部前屈位とした.口腔内汚染度はATP測定値と視覚的印象によって評価した.
口腔ケア前から口腔内清拭後,洗浄1~5回後の計7回のATP値について群内比較を行ったところ,口腔内清拭のみの場合とくらべ,洗浄を2~5回行ったあとのATP値が有意に低下していた.
以上のことから,口腔ケアを単に清拭だけでなく洗浄も併せて行うことで,嚥下障害患者の口腔内汚染度を改善できる可能性が示唆された.試行段階ではあるが,含嗽のできない患者の口腔内の保清には,口腔内清拭後に洗浄を2回以上行うことを提案する.