抄録
わが国の看護実践の場では,医療の高度化や在院期間の短縮から清潔ケアは軽視される傾向にある.その結果として,清拭は蒸した綿タオル数本で済まされることが多く,介助シャワー浴や介助入浴は実施されないまま退院することが増えている.果たしてこれで患者のニードが満たされているかは疑問である.そこで本研究では,看護師から清潔ケアを受けている患者に面接を行い,患者がそれをどのように認識しているかを検討した.
言語的コミュニケーションが可能で,全面介助で看護師による清潔ケアを受けている入院患者6名に半構造化面接を行い,患者の言葉を質的記述的手法で分析した結果,以下のことが明らかになった.
患者は清潔ケアに対して【きめ細やかなケアに対する満足感】【適切な時間と方法に対する満足感】を得ていた.しかし,患者は看護師の【粗雑なケアに対する不満】を感じており,【安全 ・ 安楽なケアに対する期待と要望】を抱いていた.以上のことから,患者は自身の存在が看護師から尊重され,安全で安楽な専門技術の提供を望んでいることが明らかになった.