抄録
本研究の目的は,危険場面における看護学生と熟練看護師の注視の状態を客観的な評価法を用いて比較することにより,危険場面における看護学生の観察の特徴を明らかにすることである.
危険場面を模擬患者がベッドから転落しそうになる場面とし,看護学生および熟練看護師各7名が危険場面に対応する際の行動を,視線計測システムおよびビデオカメラで録画し,その後半構造的面接を実施してデータを得た.
分析の結果,看護学生は熟練看護師にくらべて注視時間が1.22倍長いこと,患者の転落を防止して安全な状態にするまでの時間が長いことが明らかになった.したがって,看護基礎教育において見方や気づき方などの技術を教育する際には,看護学生は少し長めの観察時間を要すること,そして行動もすみやかにはできないという特徴があることを十分に踏まえる必要がある.