車いす移送は, 看護 ・ 介護の現場において頻度の高い援助技術であるが, その操作指標は明確とされていない. 本研究は, 段差への乗り上げ介助操作の安全 ・ 快適性を向上することを目的とし, 介助負担と乗り心地の双方を考慮した操作姿勢の指標について検討した. 60歳代女性介助者に段差乗り上げ介助操作をさせ, 介助者の操作姿勢角と車いす走行軌跡および主観評価との関係を分析した. その結果, 前輪 ・ 後輪操作とも, 持ち上げ前の車輪と段差端との距離, 最大持ち上げ高さの増加に伴い主観評価の低下を認めた. 前輪操作時は肘角度の増大と車いすとの距離の縮小, 後輪操作時は脇角度の増大と車いすとの距離の縮小は, 車輪の持ち上げ高さや持ち上げ角度を増加させ, 介助者の身体的負担感の増加および乗り心地の低下を招くことが示された.
本研究により, 乗り上げ前の前輪 ・ 後輪位置と段差乗り上げ時の介助者の姿勢を指標とした操作により, 介助者の身体的負担感の軽減と乗車者の乗り心地の改善に結びつく示唆を得た.