抄録
皮膚の問題を抱える高齢者への保湿剤塗布は, 非常に重要な看護業務の一つであると考えられる. 本研究では, 健康な成人16名を対象に, 下腿部へ保湿剤塗布を行い, 自律神経活動や主観的重心感覚について介入前後で比較した. その結果, 介入前後で副交感神経指標であるHFの増加, 心拍数の減少, そして左右の重心感覚の変化を認めた. これらの結果は, 患者への心肺系の休息活動や, 転倒予防へ向けた身体感覚を向上させる可能性を示唆した. また, 自由回答では上半身の変化を自覚した回答が得られた. 今後はさらに, 下腿部のみならず, 全身への効果を検討していく価値があると考えられた.
これらの結果から, 下腿部への保湿剤の塗布は, 単なる保湿ケアのみならず, 副交感神経系, 主観的重心感覚の変化をもたらす可能性を示唆した.