抄録
研究目的は, 終末期がん患者の安全性と安楽性を考慮した日常生活援助に対するがん緩和ケアの熟練看護師の思考を明らかにすることである. がん緩和ケアの熟練看護師7名を対象に, 日常生活援助場面の観察を行い, この観察データを補足的に活用した半構成的面接を実施した. 面接から得られた語りデータを質的記述的に分析した結果, 【苦痛なく安楽に過ごせることを重視する】【患者のその人らしい過ごし方について考える】【患者が望む最期の過ごし方について考える】【患者にとってのリスクと利益は何かを考える】【患者, 家族, 看護師間で互いが納得できる点を探る】など, 7つのカテゴリーが示された. がん緩和ケアの熟練看護師は, 終末期がん患者の多様な安楽性を思考する一方で, 患者のリスクと利益を検討し, 患者・家族・看護師間で納得できる点を探ることなどによって, 安全性と安楽性の両側面の調和を保とうと思考していることが示唆された.