目的 : 健常者の腹部正中線上の皮膚に仮想術創を作り, 同部の伸展や痛みの増強が起こりにくい清拭方法を考案し, その効果を多次元的に評価する.
方法 : 健康な成人男性15名を対象にクロスオーバー実験を実施した. 仮想術創に対して拭く方向が異なる3種類の清拭を, 順不同に日を変えて左上腹部に実施した. データは清拭方法別に低伸展群 (仮想術創近傍に掌外沿を当て仮想術創方向へ拭く), 中伸展群 (単に仮想術創方向へ拭く), 高伸展群 (仮想術創と平行に拭く) の3群に分けて分析した. 清拭には綿タオルを用い, 圧, 速さ, 回数と時間を一定にして拭いた. 評価指標はVAS (仮想術創の伸展感と痛み), 仮想術創の伸展距離, 血圧, 心拍変動, そして清拭中の感想とした.
結果 : 低伸展群では伸展感と痛みのVAS値が最も低く, 高伸展群では清拭直後に伸展感が有意に上昇した (
P<.05). また中伸展群では仮想術創を押し広げる方向へ, 高伸展群では術創が開く方向へそれぞれ有意に伸展し (
P<.01), いずれの群も交感神経活動が増加した.
結論 : 術創近傍に掌外沿を当てた状態で側腹部から術創へ向かう清拭は, 術後創の伸展や痛みを軽減する可能性が示唆された.
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