日本看護技術学会誌
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19 巻
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総説
  • 荻原 典子, 水戸 優子, 金 壽子
    2020 年 19 巻 p. 83-91
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究は, 日本の看護における「全人的ケア」とは何か, その概念を明らかにすることを目的とし, Rodgers (2000) による概念分析法を用いて30文献を対象に分析した. 結果, 属性として【全体を捉えて関わる】【存在の脅かしをやわらげる・癒す】【寄り添う】【人間らしさやその人らしさを尊重する】の4つのカテゴリー, 先行要件として患者・家族, 看護師・医療者, 社会的の3つの様相において, 脅かされ, 求め, 未充足, 質, 変化や多様化に関する5つのカテゴリーが抽出された. 帰結として解放, 回復, 家族の成長, 医療者の成長に関する4つのカテゴリーが抽出された. これらから, 『「全人的ケア」は, その人が存在を脅かされ, 人間らしさやその人らしさの尊重を求めたときに, その人の全体を捉えて関わることを基盤とし, その人の存在の脅かしをやわらげる・癒す, 寄り添うことを通じて, 人間らしさやその人らしさを尊重することである. その結果, 人間らしさやその人らしさが回復し, さらには関係する者の成長をもたらすものである』と定義された.
原著
  • ―仮想術後創を用いた実験的検討―
    石川 涼太, 深井 喜代子
    2020 年 19 巻 p. 92-103
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー
     目的 : 健常者の腹部正中線上の皮膚に仮想術創を作り, 同部の伸展や痛みの増強が起こりにくい清拭方法を考案し, その効果を多次元的に評価する.
     方法 : 健康な成人男性15名を対象にクロスオーバー実験を実施した. 仮想術創に対して拭く方向が異なる3種類の清拭を, 順不同に日を変えて左上腹部に実施した. データは清拭方法別に低伸展群 (仮想術創近傍に掌外沿を当て仮想術創方向へ拭く), 中伸展群 (単に仮想術創方向へ拭く), 高伸展群 (仮想術創と平行に拭く) の3群に分けて分析した. 清拭には綿タオルを用い, 圧, 速さ, 回数と時間を一定にして拭いた. 評価指標はVAS (仮想術創の伸展感と痛み), 仮想術創の伸展距離, 血圧, 心拍変動, そして清拭中の感想とした.
     結果 : 低伸展群では伸展感と痛みのVAS値が最も低く, 高伸展群では清拭直後に伸展感が有意に上昇した (P<.05). また中伸展群では仮想術創を押し広げる方向へ, 高伸展群では術創が開く方向へそれぞれ有意に伸展し (P<.01), いずれの群も交感神経活動が増加した.
     結論 : 術創近傍に掌外沿を当てた状態で側腹部から術創へ向かう清拭は, 術後創の伸展や痛みを軽減する可能性が示唆された.
  • 木村 恵美子, 城丸 瑞恵, 仲田 みぎわ
    2020 年 19 巻 p. 104-112
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー
     研究目的は, 終末期がん患者の安全性と安楽性を考慮した日常生活援助に対するがん緩和ケアの熟練看護師の思考を明らかにすることである. がん緩和ケアの熟練看護師7名を対象に, 日常生活援助場面の観察を行い, この観察データを補足的に活用した半構成的面接を実施した. 面接から得られた語りデータを質的記述的に分析した結果, 【苦痛なく安楽に過ごせることを重視する】【患者のその人らしい過ごし方について考える】【患者が望む最期の過ごし方について考える】【患者にとってのリスクと利益は何かを考える】【患者, 家族, 看護師間で互いが納得できる点を探る】など, 7つのカテゴリーが示された. がん緩和ケアの熟練看護師は, 終末期がん患者の多様な安楽性を思考する一方で, 患者のリスクと利益を検討し, 患者・家族・看護師間で納得できる点を探ることなどによって, 安全性と安楽性の両側面の調和を保とうと思考していることが示唆された.
  • 大泉 綾亮, 杉本 吉恵, 中岡 亜希子, 伊藤 良子, 山口 舞子
    2020 年 19 巻 p. 113-120
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 沐浴剤清拭と温湯清拭を比較し, 沐浴剤清拭が皮膚保湿効果を示すのかを明らかにすることである. 地域在住の65歳以上の高齢者27名を対象に実験を行った. 沐浴剤清拭と温湯清拭を無作為に左右前腕にそれぞれ実施し, 清拭直前・直後・3分・5分・10分・20分後のTEWLと角質水分量を測定した. 結果, 清拭方法と時間経過による交互作用はなかった. また, 清拭方法の違いによる皮膚保湿機能への影響にも差はなかった. 両清拭方法のデータを1群にまとめると, 清拭直前と比較して, TEWLではすべての測定時点で清拭直前からの有意な上昇があった. 角質水分量では清拭直後に有意に上昇した後, 10分, 20分後に有意な低下があった.
     これらの結果から, 高齢者に対する沐浴剤清拭は温湯清拭と比較して皮膚保湿効果を示さないことが明らかになった. また, 高齢者の皮膚は清拭という弱い刺激であっても非常に乾燥しやすいことが明らかになった. そのため高齢者に対して清拭をする際には, 皮膚への配慮をより行う必要性が示唆された.
  • 岡山 貴史, 掛田 崇寛
    2020 年 19 巻 p. 121-130
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究は, 健康な成人男女19名を対象に, 災害発生急性期を想定し, 我々が開発した水を用いない手指衛生手法の有用性を実験環境下で検証した. 本研究はカウンターバランス法を用いた無作為化比較試験で実施した. 手指衛生は今回開発したWater-less Scrub (WS) 法, 従来から有用とされるHand Wipe (HW) 法, Controlの3方法で行った. 指標は総細菌数および菌種同定による客観的評価に加えて, Visual analogue scale (VAS) による心地よさの主観的評価で構成した. その結果, 総細菌数はControlと比較して, WS法およびHW法でいずれも有意な減少が認められた (P<0.05). つぎに, 菌種同定ではGram-positive-rods, Gram-positive-coccus, Gram-negative-rods, Non-fermenting-gram-negative-rods, Yeast-like-cells, MOLDがそれぞれ今回検出された. なかでも, 食中毒の起因菌となり得るGram-positive-rodsおよび日和見感染菌のNon-fermenting-gram-negative-rodsに関しては, WS法の実施によってControlと比して有意に細菌数が減少した. また, WS法は心地よさのVAS値においてもControlと比較して, HW法同様, 心地よさの評価が有意に上昇した. よって, WS法は災害発生急性期の新たな代替手指衛生手法となり得ることが示唆された.
その他
  • 原 好恵, 西村 直記, 篠崎 惠美子
    2020 年 19 巻 p. 131-139
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー
     筋肉内注射による硬結の予防対策を検討するための第一段階として, 殿部への温罨法による生理的変化と安全性を検証することを目的とした.
     健康な女性9名を対象とし, 人工気候室内で, 電子レンジ加熱型ホットパックを使用して片側殿部に15分間の温罨法を行った. 両側殿部の皮膚血流量・皮膚温, 介入側殿部の組織血流量・組織硬度, 直腸温, 鼓膜温, 安楽・不快感の程度等を観察し, Mann-WhitneyのU検定, Friedman検定を用いて分析した.
     殿部へのホットパック貼用によって, 介入側殿部の皮膚温・皮膚血流量・組織血流量は有意に上昇した. よって, 貼用部位の皮膚・筋肉内の血流量促進が検証でき, 硬結形成の予防に関連する可能性が示唆された. 介入側殿部の組織硬度に有意な変化は認められず, 加温による皮下・筋組織の伸張作用は検証できなかったため, 実際に筋肉内注射を受けている患者で注射前後の変化を検証する必要性を確認した.
  • 菅原 啓太
    2020 年 19 巻 p. 140-145
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー
     食事摂取を促すケアとして, 手浴が活用できるかを検討するために, 本研究では, 臨床現場で活用可能な方法で行う食前の手浴が生体に及ぼす効果を, 自律神経活動, 心拍数, 血圧の指標を用いて明らかにすることを目的とした. 被験者は, 健康な男性19名 (21.9±3.6歳)とし, 実験群 (11名) と対照群 (8名) に順次割り付けを行った. 手浴は, 40℃の温湯に両手を浸漬した後, 石鹸で洗浄し, 再度浸漬した後, 乾いたタオルで水分を拭き取ってもらう方法を採用した. 対照群は空のベースンを用いたことと石鹸を使わなかったこと以外は, 実験群と同じ方法とした. その結果, 食前に実施する手浴は, 副交感神経活動が賦活化するまでには至らないが, 亢進した交感神経活動を安定したバランスに整える可能性を示唆した. このことから, 交感神経活動の亢進によって消化管の運動および分泌機能が抑えられることを防止するケアとして, 手浴を活用できる可能性が推察された.
  • 野里 同, 高橋 亮, 武田 利明
    2020 年 19 巻 p. 146-153
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究は, エビデンスに基づく看護ケアを検討するための基礎的な知見を得るためにラットの背部皮下にカテコラミン製剤を漏出し, 皮膚傷害を実験的に作製した後, 7日間皮膚の状態を経日的に観察するとともに組織学的検索も行った.
     1日目の組織学的検索では, 潰瘍形成に至らない症例と潰瘍形成した症例が共通して皮下組織に急性炎症反応が認められ, 傷害像は7日目も持続していた. また, 皮膚傷害が重篤化した潰瘍形成の症例は, 1日目に皮下組織に多発性の血栓が確認され, 3日目も持続していたことから, 当該製剤の血管外漏出による潰瘍形成の一要因として, 多発性の血栓による持続的な循環障害が関与していることが新たに明らかとなった.
     これらのことから, 当該製剤の血管外漏出時は肉眼的に正常であっても皮膚内部では傷害が持続するため, 注意深い観察を継続的に行う必要性が示唆された.
総説
  • 菅原 啓太
    2020 年 19 巻 p. 33-42
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 国内外の手浴に関する2019年2月までに発表された文献において, どのような研究デザインや手浴方法が用いられているのかを整理するとともに, 手浴が心身へ及ぼす効果を明らかにすることである. PubMed, CINAHL Plus With full text, Cochrane Library, 医学中央雑誌, CiNiiにて文献検索を行った結果, 12件の文献が分析対象となった. 研究デザインには, RCTが3件, non-RCTが4件, 前後比較試験が5件用いられていた. 温度は39~42℃の範囲で設定され, 浸漬時間はほとんどの文献で10分が採用されていた. また, 浸漬部位は, 橈骨茎状突起部周辺までであった. 手浴には, 浸漬部位だけではなく, 浸漬部位以外の皮膚温を上昇させ, からだを温める効果があると推察された. また, 手浴後は浸漬部位の被覆が重要であり, 被覆することで手浴後の皮膚温の低下を防いでいた. 手浴中にハンドマッサージを取り入れることで, より効果的に温かさを感じてもらうことができるのではないかと考えられた.
原著
  • 中野 元, 四十竹 美千代, 西条 寿夫, 堀 悦郎
    2020 年 19 巻 p. 43-53
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー
     手浴による自律神経反応および中枢神経反応を調べる目的で, 対象者を交感神経優位群と副交感神経優位群に分けて検討した. 自律神経反応は心拍変動解析により, 中枢神経反応は近赤外分光法を用いた脳血行動態により前頭葉の活動を調べた. 健常成人男女20名を対象とし, 38℃で5分間の手浴実験および対照実験を行った. その結果, 交感神経優位群では, 手浴により交感神経活動が低下し, 副交感神経活動が亢進した. また, 主観的な気分の変化として, 手浴によりリラックス感が上昇していた. 一方, 副交感神経優位群では, 手浴により交感神経活動が亢進し, 副交感神経活動は低下した. 手浴による中枢神経系の反応として, 副交感神経優位群では背外側前頭前野および前頭極の活動が亢進した. また, 対照実験でみられた副交感神経優位群における活気の低下が, 手浴により抑制されていた. 以上のことから, 手浴は中枢神経系を介して自律神経および主観的気分のバランスを整える可能性が考えられる.
  • 宍戸 穂, 杉村 直孝, 安田 佳永, 渡部 一拓, 紺谷 一生, 三浦 苑華, 矢野 理香
    2020 年 19 巻 p. 54-62
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 背部への清拭時の拭き取り前に温タオルを10秒間貼用する効果を, 皮膚のバリア機能 (角質水分量, 経表皮水分蒸散量 : TEWL), 清浄度 (皮脂量, アデノシン三リン酸値 : ATP値), 皮膚表面温度および主観的評価より明らかにすることである. 調査方法は, 準実験デザインとし, 健康成人13名 (平均年齢24.1±1.5歳) の背部において, 拭き取り前に温タオルを10秒間貼用する清拭 (10秒貼用清拭) と拭き取りのみの清拭 (貼用なし清拭) を実施した. その結果, 2つの清拭には, 皮膚バリア機能の指標である角質水分量, TEWLに有意差はなく, どちらの清拭ともに皮脂量およびATP値が有意に低下した. 以上より, 健康成人の背部への清拭を本研究における方法で実施する場合には, 10秒間の温タオル貼用の有無に関わらず, 皮膚バリア機能を悪化させずに実施前よりも清浄度が高まったと考えられた. 一方, 背部への10秒貼用清拭は, 皮膚表面温度を貼用直後に2.2℃上昇させ, 貼用なし清拭よりも乾拭終了15分後において気持ちよさを有意にもたらすことが明らかになった.
その他
  • 加藤 智史, 習田 明裕
    2020 年 19 巻 p. 63-72
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究は身体接触を用いた会話中の2者間の心拍変動の同期現象, 自律神経活動指標および主観的指標の変化を検討することを目的とした. 健康な18歳以上の男女49名を対象に, 同性かつ同年代の初対面のペアを作成し, クロスオーバー試験を行った. 実験課題として, 介入群は会話に加え, 身体接触を行った. 対照群は会話のみを行った. その結果, 心拍変動の同期現象は確認できたが群間で有意差はみられなかった. 介入群の自律神経活動指標は緊張状態からの緩和を示した. 主観的指標は, 会話中の快感情, 相手への印象, 身体接触の有効性に関して, 介入群の方が有意に高かった. 加えて, 身体接触されることへの抵抗感と多くの項目に相関がみられた. これらの結果から, 有効な身体接触を行うためには, 相手だけでなく, 自身がもつ身体接触に対する認識や抵抗感についてもアセスメントをする必要性があることが示唆された.
  • 古島 智恵, 長家 智子
    2020 年 19 巻 p. 73-82
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究は, 硝子体手術後のうつむき姿勢を想定した体位の保持に伴う苦痛に対して, 頸部, 肩部のストレッチを中心とした自動運動の効果を心理的および生理的指標を用いて検証することを目的とした.
     被験者は若年健常成人23名 (22.6±2.8歳) とし, うつむき姿勢保持のみの条件および, うつむき姿勢保持に加え自動運動を実施する2条件を実施し比較検討した. うつむき姿勢保持は90分間とし, 自動運動は姿勢保持開始45分後から5分間実施した. 測定項目は気分評価, 主観的疼痛, 心拍数, 心拍変動, 血圧, 皮膚温, 皮膚血流量等とした.
     うつむき姿勢保持条件に対し, 自動運動条件では, 疲労得点が低く (P=0.039), 肩部の主観的疼痛が低値で経過し (P=0.049), 拡張期血圧が低下しなかった (P=0.040). したがって, 硝子体手術後のうつむき姿勢保持時における自動運動の実施は, 肩部の疼痛緩和を中心とした苦痛への援助として期待できることが示された.
その他
  • 加藤木 真史, 細野 恵子, 久賀 久美子, 丸山 朱美, 秋山 雅代, 加藤 京里, 吉良 いずみ, 酒井 礼子, 田中 美智子, 塚越 ...
    原稿種別: その他
    2020 年 19 巻 p. 1-13
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 筆者らが作成した排便に関する看護援助の必要性をアセスメントするフローチャートVer. 2 (吉良ら 2016) を用いた排便パターンの分類結果をもとに, より活用しやすい排便記録と, 分類精度の高いフローチャートに改訂することであった.
     2週間の排便記録用紙に排便日数, 便の硬さの情報が記載された6種類の模擬排便記録を作成し, 看護職者・看護学生らにフローチャートを使用した排便パターンの分類を依頼した. 分類を誤った要因の分析から, 排便記録用紙とフローチャートを改訂した結果, 模擬排便記録の分類の合計正解数は有意に上昇し, 各排便パターンの正解率も有意に上昇した. しかし, 正解率が80%以下の排便パターンも残った. 以上より, 排便記録用紙, フローチャートにおける課題を検討し, 新たな排便記録用紙とフローチャートVer. 4を提案した.
  • 松島 正起, 角濱 春美
    原稿種別: その他(資料)
    2020 年 19 巻 p. 14-22
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 看護師の注視と認知に関する先行研究の結果を, 扱われている観察場面をもとに整理し, 看護師の認知を妨げるバリアが認知心理学における認知過程のどこに, どのような要因から生じるのか検討することである.
     看護師の認知を妨げるバリアには, 「何を観察すべきか分からないと観察すべき箇所を注視できない」「行為に関する情報に多くの注意が配分されると周辺情報を注視できない, または周辺情報を注視しても認知できない」「知識, 経験がないと, 観察すべき箇所を注視しても認知できない」が考えられた.
     観察場面には患者周囲環境と危険認知, 看護行為中があったが, 患者が不快な状態への看護師の注視と認知を明らかにした研究はなかった. 今後の課題として, 患者の不快への看護師の注視と認知について調査する必要がある.
  • 杉村 直孝, 矢野 理香
    原稿種別: その他(短報)
    2020 年 19 巻 p. 23-32
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/04/20
    ジャーナル フリー
     新人看護師が特に困難を感じる静脈血採血などの静脈穿刺に焦点をあてて熟練看護師の実践から可視化された触診技術を導入した新技術教育プログラムを作成した. 本研究の目的は, そのプログラムを看護学生へ試行し学生の自己評価の視点から新プログラムの改善点を検討することである. 看護学生15名を対象に新プログラム群 (n=7) と従来プログラム群 (n=8) の2群を設定し各プログラムの実施と実技試験, 自己評価を行った. 判断の参考とした熟練看護者4名と同じ採血穿刺部位を選んだ者は新プログラム群が6名 (85.7%), 従来プログラム群が2名 (25.0%) で, 新プログラムと適切な穿刺部位の選択に有意な関係が示された (P=.041). 自己評価より従来プログラムでは一部の学生は触診を適切に実践できず到達度に個人差がみられたが, 新プログラムでは全員が ‘適切’ 以上と評価した. 今後の改善点として解剖学的知識の強化や演習機会を増やし触診による血管の差異を観察することなどが明らかになった.
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