抄録
本研究の目的は, 沐浴剤清拭と温湯清拭を比較し, 沐浴剤清拭が皮膚保湿効果を示すのかを明らかにすることである. 地域在住の65歳以上の高齢者27名を対象に実験を行った. 沐浴剤清拭と温湯清拭を無作為に左右前腕にそれぞれ実施し, 清拭直前・直後・3分・5分・10分・20分後のTEWLと角質水分量を測定した. 結果, 清拭方法と時間経過による交互作用はなかった. また, 清拭方法の違いによる皮膚保湿機能への影響にも差はなかった. 両清拭方法のデータを1群にまとめると, 清拭直前と比較して, TEWLではすべての測定時点で清拭直前からの有意な上昇があった. 角質水分量では清拭直後に有意に上昇した後, 10分, 20分後に有意な低下があった.
これらの結果から, 高齢者に対する沐浴剤清拭は温湯清拭と比較して皮膚保湿効果を示さないことが明らかになった. また, 高齢者の皮膚は清拭という弱い刺激であっても非常に乾燥しやすいことが明らかになった. そのため高齢者に対して清拭をする際には, 皮膚への配慮をより行う必要性が示唆された.