抄録
本研究は, 健康な成人男女19名を対象に, 災害発生急性期を想定し, 我々が開発した水を用いない手指衛生手法の有用性を実験環境下で検証した. 本研究はカウンターバランス法を用いた無作為化比較試験で実施した. 手指衛生は今回開発したWater-less Scrub (WS) 法, 従来から有用とされるHand Wipe (HW) 法, Controlの3方法で行った. 指標は総細菌数および菌種同定による客観的評価に加えて, Visual analogue scale (VAS) による心地よさの主観的評価で構成した. その結果, 総細菌数はControlと比較して, WS法およびHW法でいずれも有意な減少が認められた (P<0.05). つぎに, 菌種同定ではGram-positive-rods, Gram-positive-coccus, Gram-negative-rods, Non-fermenting-gram-negative-rods, Yeast-like-cells, MOLDがそれぞれ今回検出された. なかでも, 食中毒の起因菌となり得るGram-positive-rodsおよび日和見感染菌のNon-fermenting-gram-negative-rodsに関しては, WS法の実施によってControlと比して有意に細菌数が減少した. また, WS法は心地よさのVAS値においてもControlと比較して, HW法同様, 心地よさの評価が有意に上昇した. よって, WS法は災害発生急性期の新たな代替手指衛生手法となり得ることが示唆された.