抄録
半身麻痺, 空間失認, 見当識障害などの神経学的症状は, 病棟での転倒転落事故の大きな誘因とされ, 予防策が望まれてきた. 本研究では, 事故は右大脳半球障害, ADLでは車椅子レベル, 生活動作では排泄時に特に多いとしたわれわれの先行研究に基づいて新たに作成したアセスメントスコアシートと対策が, 実際に事故の防止に有用であったかを検討した. 本対策導入後の2001年1月から12月に脳外科病棟に入院し, 本シートによって点数化を行った568名を対象に, 医療記録からの後ろ向き調査を行った. 事故の発生有無で得点を比較したところ, 事故あり群の平均値が13.25 ± 3.08点, なし群では8.59 ± 4.63点であり, 2群間に有意差が認められた (z=4.96, p<0.01). 事故件数の推移をみると事故は減少していた (r=-0.168). これらの結果から, 本アセスメントスコアは脳外科患者に対する転倒事故のリスクのアセスメントが可能でかつ予防にも効果があると考えられた.