日本看護技術学会誌
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原著
筋肉内注射における Z - track 法の検討
─皮膚表面と皮下組織層の移動距離の差から─
高橋 有里小山 奈都子石田 陽子
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2009 年 8 巻 2 号 p. 4-11

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抄録
 本研究は, 筋肉内注射時に薬液の皮下への漏れを防ぎ筋層に封入するための工夫である Z - track法の原理の検証を行うことを目的として, Z - track 法施行時の皮膚表面と皮下組織層の移動距離について分析した. 健康な女性 15 名の左右 30 側における三角筋部肩峰中央 5 cm 下部と中殿筋部ホッホシュテッターの部位, 計 120 部位を測定した. 部位選定後, 針刺入目標位置を定めてマーキングし, 平常時から Z - track 法に則り皮膚を一方向に伸展させたときの皮膚表面上のマークの肉眼的移動距離をスケールで計測した. また, 同様にマーク部に超音波診断装置を当てて, その映像により皮下組織層の移動距離を計測した. その結果, 皮下組織層の移動は皮膚表面の移動距離の半分以下であった. そのため三角筋部では, 一方向に強く皮膚表面を伸展しても皮下組織層まではほとんど移動させられず, Z - track 法の原理に基づき施行することは困難と考えられた. 一方, 中殿筋部では, 筋層の上をスライドして皮下組織層が移動する様子が確認でき, Z - track 法の原理は示された. ただし, Z - track 法の効果については, この移動の程度によって確実に筋肉層内へ薬液が封入されるのかを明らかにしたうえで検討しなければならない.
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© 2009 日本看護技術学会
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