抄録
療養上の世話の比重が高い療養病床において, 自分たちのケアによって患者の状態が改善するという経験は, 看護職者のやりがいとなり, 療養上の世話の充実につながると考える. 本研究では, 腹臥位療法を患者の可能性に働きかける療養上の世話の一つと位置づけ, その実践による患者の変化と, そのことによる看護職者への変化について, ミューチュアル ・ アクションリサーチを参考に取り組んだ.
研究参加者は, 療養病床に勤務する中堅看護職者 3 名である. 脳血管障害による高次脳機能障害で全失語のある M さんを対象に, 腹臥位療法を実践しながら定期的に話し合いを行い, 3 名にそのときの思いを 「なんでもノート」 に書き綴ってもらった. 実践の結果, M さんに発語や心身機能の向上がみられた. 当初は実践に葛藤していた 3 名だったが, 話し合いや 「なんでもノート」 を通して内省しながら, M さんの変化によってエンパワメントしていった. そして, 仕事へのやりがいやケアへの自信を得ることができた.