抄録
本研究は,グリセリン浣腸時に有害事象のあった事例から,症状および出現時期に加えて,直腸の形態を中心にカテーテル挿入の長さと損傷部位について分析した.対象は,1979~ 2008年に発表され,損傷部位が記載されていた症例 32件とした.対象者の既往疾患は消化器系疾患が多く,浣腸実施後に多くみられた身体症状は血色素尿 ・ 溶血,下血 ・ 出血であった.また,その大半が浣腸当日から翌日までに出現していた.よって,消化器系疾患をもつ者への浣腸には特に注意が必要であり,浣腸実施から翌日まで血色素尿 ・ 溶血,下血 ・ 出血の有無について観察を行う必要があると考えられる.また,有害事象のあった事例のうち,カテーテル挿入の長さは5.1~5.5 cmが 10件で最も多く,5 cm以上の挿入は避けるべきである.損傷部位としては,前壁~左壁~後壁に損傷が多かった.よって,左側臥位,シムス位での実施時に損傷が起こりやすい可能性を考え,カテーテル挿入の長さは 4.1~4.5 cmとすることが望ましいと考えられる.