抄録
本研究は温度の異なる2種の温罨法が,便秘の症状緩和に同様の効果を及ぼすかどうかを明らかにすることを目的とした準実験研究である.排便状況と便秘の自覚症状,下剤の使用状況を,各4週間の非罨法時と罨法時で比較した.被験者は便秘の自覚症状がある女性55名で,60℃の蒸気温熱シートを1日1回10分間腰部に貼用する60℃群27名 (平均31.9歳),40℃の蒸気温熱シートを1日5時間腰部に貼用する40℃群28名 (平均33.5歳) であった.その結果,60℃群では,4週間の排便総数を18.9回から22.1回に有意に増加させ,下剤の使用日数を3.9日から2.0日に有意に減少させた.40℃群は,4週のうち日本語版便秘評価尺度が5点以上の週数を3.1週から1.7週に有意に減少させ,排便がなかった日数を13.0日から11.1日に有意に減少させた.60℃10分と40℃5時間の腰部への温罨法は,ともに便秘の症状を緩和させるが,効果が異なる点もあり,温熱刺激とその反応について考察した.