日本看護技術学会誌
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9 巻, 3 号
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原著
  • 菱沼 典子, 山崎 好美, 井垣 通人
    2010 年 9 巻 3 号 p. 4-10
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー
     本研究は温度の異なる2種の温罨法が,便秘の症状緩和に同様の効果を及ぼすかどうかを明らかにすることを目的とした準実験研究である.排便状況と便秘の自覚症状,下剤の使用状況を,各4週間の非罨法時と罨法時で比較した.被験者は便秘の自覚症状がある女性55名で,60℃の蒸気温熱シートを1日1回10分間腰部に貼用する60℃群27名 (平均31.9歳),40℃の蒸気温熱シートを1日5時間腰部に貼用する40℃群28名 (平均33.5歳) であった.その結果,60℃群では,4週間の排便総数を18.9回から22.1回に有意に増加させ,下剤の使用日数を3.9日から2.0日に有意に減少させた.40℃群は,4週のうち日本語版便秘評価尺度が5点以上の週数を3.1週から1.7週に有意に減少させ,排便がなかった日数を13.0日から11.1日に有意に減少させた.60℃10分と40℃5時間の腰部への温罨法は,ともに便秘の症状を緩和させるが,効果が異なる点もあり,温熱刺激とその反応について考察した.
  • 中田 弘子, 藤田 三恵, 小林 宏光, 川島 和代
    2010 年 9 巻 3 号 p. 11-18
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,長期臥床患者の拘縮手に対するハンドロールの汚染防止および防臭に与える効果を客観的に明らかにすることである.対象者は,65歳以上の拘縮手のある入院患者20名であった.拘縮手に手浴ケアを実施した後,3種類のハンドロールをそれぞれ3日間使用した.タオルをロール状にした通常のハンドロールの場合,指間部もカバーする指股付きハンドロールの場合,緑茶葉を入れたハンドロールの場合,ハンドロールを用いない場合の4条件で比較した.ハンドロールの汚染防止効果はATP拭き取り検査法,防臭効果はニオイセンサー法で評価した.通常および指股付きのハンドロールでは,使用開始から3日目の臭度に有意な低下がみられた.さらに指股付きハンドロールでは,臭度に加えて汚染度にも有意な低下がみられた.緑茶葉入りハンドロールの衛生効果については,本研究では効果がみられなかった.ニオイセンサー法では臭いの快 ・ 不快までは判別できないため,緑茶葉の効果が明確には得られなかったと考えられる.
研究報告
  • 谷田 恵子
    2010 年 9 巻 3 号 p. 19-26
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー
     本研究では,主観的睡眠感と心拍変動のパワースペクトル指標との関係性を検討した.健康成人女性10名を対象として,1人あたり2~3夜の調査を行い,のべ21セットのデータを得た.終夜睡眠ポリグラムからは総睡眠時間,実睡眠時間,入眠潜時および中途覚醒を評価し,心拍変動データの1分区分ごとの周波数解析結果からは低周波数成分 (LF),高周波数成分 (HF),LF/HF,HF/ (LF+HF) の睡眠深度別の平均値と一晩の平均値を算出し,これらの客観的指標値とOSA睡眠感得点の相関関係を求めた.その結果,LF/HFは第2因子「睡眠維持」,第3因子「気がかり」,第4因子「統合的睡眠」と負の相関関係が認められ,HF/ (LF+HF) はこれら3つの因子に加えて第1因子「眠気」とも正の相関関係があった.しかしながら,第5因子「入眠」は,いずれのパワースペクトル指標とも関係性が認められなかった.以上の結果より,HF/ (LF+HF) からは,主観的睡眠感のうちの入眠に関する評価は困難であるが,その他の睡眠感については評価できる可能性が示唆された.
  • 小林 しのぶ, 金子 有紀子, 柳 奈津子, 小板橋 喜久代
    2010 年 9 巻 3 号 p. 27-33
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,リラクセーション外来受診者の特性および外来でのリラクセーション技法実施の効果を明らかにすることである.A病院リラクセーション外来受診者113名 (49.0±13.5歳) を対象に主訴,受診理由,ストレス状態を調査した.また,受診者113名の延べ378回のリラクセーション技法実施前後に血圧,脈拍,リラックス尺度を測定した.その結果,精神的健康診断パターン検査 (MHP-1) から,受診者は高いストレス状態にあることが確認された.また,8割近い受診者が精神的訴えを抱え受診することが明らかになった.受診理由は「心身の安定を図りたい」が最も多く,受診者の7割以上があげた.リラクセーション技法実施前後の比較では,実施後に血圧と脈拍数が有意に低下し (p<0.001),主観的指標のリラックス尺度得点は実施後に有意な上昇が認められ (p<0.001),リラクセーション技法により,心身両面からリラックス反応が得られた可能性が示唆された.
実践報告
  • 芳賀 麻有, 丸山 良子
    2010 年 9 巻 3 号 p. 34-39
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー
     近年アロマテラピーのリラクセーション効果は注目を集め,緩和ケアや産婦人科など多岐にわたる医療現場での使用が試みられている.これまで香りの自律神経系への影響については,ラベンダーなど西洋由来の芳香を用いた研究が中心であり,日本で身近に親しまれてきた芳香である「香」の自律神経系への影響を報告するものはわずかである.
     そこで本研究では,古来より用いられてきた「香」である白檀と沈香の影響について,健康女性8名を対象に,血圧,脈拍,心拍変動解析を用いた自律神経活動の評価によって検討した.結果として,白檀,沈香ともに交感神経活動の指標であるLF/HFが香り吸入時から減少傾向を示し,交感神経活動に抑制的に働く鎮静 ・ リラクセーション効果をもつこと,さらにその効果はしばらく持続することが示唆された.血圧,脈拍についは,「香」が及ぼす影響はわずかであり非常に穏やかな刺激であることが示唆された.
  • 小林 しのぶ, 柳 奈津子, 小板橋 喜久代
    2010 年 9 巻 3 号 p. 40-44
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー
     【背景】これまで携帯型唾液アミラーゼ測定器を用いて外来患者に対するリラクセーション技法の実施効果を明らかにした研究はない.
     【目的】携帯型唾液アミラーゼ測定器がリラックス反応評価に有用か否かを検討すること.
     【方法】外来患者91名に対し延べ278回のリラクセーション技法を実施した.リラクセーション技法実施前後に唾液アミラーゼ活性値 (以下sAMY),収縮期血圧,脈拍数,主観的尺度を測定し分析を行った.
     【結果】リラクセーション技法実施後に収縮期血圧と脈拍数は有意に低下し,主観的尺度得点は有意に上昇したことからリラックス感が得られたことが確認された.一方,sAMYはリラクセーション技法実施後に有意な変化を認めなかった.また,主観的尺度得点と収縮期血圧,脈拍数との間で有意な相関を認めたが,sAMYと有意な相関は認められなかった.
     【結論】携帯型唾液アミラーゼ測定器は,外来患者におけるリラクセーション技法実施時のリラックス反応評価には適切ではないと考えられた.sAMYの反応性,携帯型唾液アミラーゼ測定器の使用条件などに関してさらなる検討が必要である.
短報
  • 岡田 ルリ子, 徳永 なみじ, 相原 ひろみ, 宮腰 由紀子
    2010 年 9 巻 3 号 p. 45-49
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー
     本論文は,皮膚生理機能を維持する看護技術の開発に向けて,部分温浴の温熱刺激によって増加した皮膚血流が角層に水分を与え保湿する,というわれわれが提起した作業仮説を検証したものである.片側手部のみ10分間温浴し,対側前腕で,皮膚血流の増加を示す指標としての皮膚表面温度,および角層水分量 ・ 水分蒸散量を測定した.その結果,皮膚表面温度 ・ 角層水分量は上昇 ・ 増加し,温浴終了後も一定水準を保持した.一方,水分蒸散量は温浴により急増したが,温浴終了後はもとに戻る傾向を示した.また,皮膚表面温度と角層水分量はかなりの相関を認めたが,皮膚表面温度と水分蒸散量は無相関であった.以上より,“部分温浴の温熱刺激により増加した皮膚血流は,角層への水分供給を行い,皮膚表面からの緩徐な水分蒸散を促すが,その刺激は穏やかであるため,温熱刺激終了後の皮膚血流は速やかに平常化し水分蒸散を抑える.よって,一度角層に供給された水分は蒸散せずに貯蓄され保持される” という仮説を支持する結果を得た.今後,皮膚血流量の実測も加え,さらに検証を進めていきたい.
  • 鶴木 恭子
    2010 年 9 巻 3 号 p. 50-55
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー
     本研究は,重曹を清拭時の清拭剤として使用した場合,温湯清拭に比べて皮脂を除去する効果はあるのかについてと,発赤や.痒感など皮膚への影響を明らかにする目的で行った.被験者は女子学生14名である.重曹をお湯に溶かし,そのお湯に浸したタオルを絞り前腕を清拭し,pH,角質水分量,発赤の観察,アンケート調査を実施した.対照群として,もう片方の前腕には温湯清拭を行い同項目の測定を行った.その結果,重曹清拭が温湯清拭よりも皮脂を除去できるかどうかについては明らかにすることはできなかった.しかし,清拭後の皮膚が弱酸性に戻りやすい清拭剤になる可能性があることがわかった.発赤と.痒感については1例の出現もなかった.今回の結果は,重曹を用いた清拭は皮脂を除去できないと断定できるものではなく,皮膚pHの結果から推測すると重曹の作用を皮膚に与えることができなかったためではないかと考える.このため,今後は重曹の作用を皮膚に与えられる絞り方など方法を検討し,重曹清拭の影響を明らかにしていきたい.
  • 田中 かおり, 飯野 矢住代, 加悦 美恵
    2010 年 9 巻 3 号 p. 56-61
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー
     背部清拭において,乾拭を実施した場合 (以下,乾拭時) と乾拭を実施しなかった場合 (以下,非乾拭時) との生理的反応,主観的反応,実施時間の相違を比較し,乾拭を実施することの意義を検討する.対象は,本研究の同意が得られたA大学の健康な女子学生8名とした.
     条件を一定にした被験者に,乾拭を実施する背部清拭と乾拭を実施しない背部清拭を行った.生理的反応は,乾拭時が末梢まで温まり,皮膚湿度は低く経過した.主観的反応は,乾拭時が快適感を与えることができた.乾拭時の所要時間は,わずか18秒程度であったことより,乾拭を実施する意義があることが示唆された.
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