【要旨】中枢神経系では病原体の感染により種々の病態がもたらされる。病理学的には脳炎・脳症は組織形態により区別される。形態観察で炎症が認められる場合に脳炎、炎症を欠くものが脳症とされ、これらは宿主側の反応の違いによる。感染症の病理学的検索では、同一検体上で病原体の感染とその結果としての組織反応や形態変化の関係性を併せて評価することが重要となる。本稿では病原性微生物の感染による脳炎および脳症の代表的疾患につき病理組織像を提示しながら概説し、感染症が疑われる原因不明脳炎に対する国立感染症研究所感染病理部における網羅的な病原体の新規検索法についても紹介する。