ダニ媒介性脳炎(tick-borne encephalitis、以下 TBE)はマダニの吸血により罹患し重篤な症状を呈するウイルス性人獣共通感染症である。ユーラシア大陸の広域で年間一万人前後の患者が発生している。日本では、1993 年に北海道において、国内初の TBE 確定診断症例が報告され、その後、2016〜2018 年に相ついで2〜5例目までの患者が発生した。われわれはダニ媒介性脳炎ウイルス(tick-borne encephalitis virus、以下 TBEV)感染に対する診断系を確立し、継続的な血清疫学調査を実施により、北海道の広域および道外においても流行巣が分布している可能性を示している。 本稿では、TBEV の一般的な情報とともに、われわれが行ってきた TBE に関する最新の研究知見を紹介し、TBE 流行に関する課題を考察したい。