NEUROINFECTION
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Print ISSN : 1348-2718
会長講演
ヘルペスウイルスの中枢神経病原性解明を目指して
吉川 哲史
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2022 年 27 巻 1 号 p. 1-

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抄録

【要旨】9 種類のヒトヘルペスウイルスのなかで、αヘルペスウイルス亜科に属する herpes simplex virus (HSV)と varicella-zoster virus(VZV)は神経親和性が強く、いずれも初感染後に知覚神経節に潜伏感染した後再活性化し皮膚粘膜病変をきたす。一方、私たちが長年主要な研究テーマとして取り組んでいる human herpesvirus 6B(HHV-6B)は cytomegalovirus と同じβヘルぺスウイルス亜科に属し、グリア細胞をはじめとしてさまざまな細胞に感染し得るが、おもにリンパ球系の細胞に強い親和性がある。初感染で突発疹を起こし、その際の合併症としては熱性けいれん、脳症などの中枢神経合併症が頻度も高く臨床的に重要な課題である。熱性けいれんに関して複雑型熱性けいれんを合併する割合が高く、さらに本症に伴う熱性けいれん重積とその後の海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかんとの関連性も示唆されている。また、HHV-6B 脳症に関しては、初感染時だけでなく成人の造血幹細胞移植患者を中心にウイルス再活性化による急性辺縁系脳炎の原因となることも知られている。本稿では、第 25 回日本神経感染症学会のテーマである「pathogen と host の解析から見えてくるもの」の観点から、われわれがおもに取り組んできた HHV-6B の中枢神経病原性に関する研究を振り返ってみたい。

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© 2022 日本神経感染症学会
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