2024 年 29 巻 1 号 p. 21-25
小児の急性脳症はCOVID-19にさまざまな影響を受けた。オミクロン株の流行期に急性脳症の報告が増加し、厚生労働省高梨班の調査では31 例の小児のCOVID-19関連脳症の臨床像が報告された。けいれん重積型(二相性)脳症が最多で、全体の29%が死亡または重度後障害であり予後不良な症例が高率であった。また、COVID-19 の流行とそれに対する感染対策は、小児の感染症の疫学に甚大な影響を与えた。インフルエンザなどの気道感染症は激減し、それに伴ってインフルエンザ関連脳症が大きく減少した。一方、HHV-6/7 感染症は大きな影響を受けず、HHV-6/7 関連脳症の発症は続いている。出血性ショック脳症症候群は、重症の急性脳症として日本では比較的認知度が高いが、近年欧米からの報告はきわめて少ない。一方、劇症脳浮腫型脳症という概念が報告され、その特徴の一部は出血性ショック脳症症候群と類似している。出血性ショック脳症症候群はいまだ確固たる診断基準がなく、その作成と周知が望まれる。