NEUROINFECTION
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Print ISSN : 1348-2718
教育講演
脳炎・髄膜炎(成人)の診療と課題
中嶋 秀人
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2024 年 29 巻 1 号 p. 26-31

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抄録

脳炎・髄膜炎は迅速な診断と早期に的確な治療を開始することが必要な神経救急疾患であるが、原因はウイルス、細菌、結核、真菌など感染症のほか自己免疫機序によるものなど多岐にわたるうえ、臨床現場ではすみやかに原因病原体を同定することが困難なときも少なくない。そのため、推測される病原体に対する経験的治療(empiric therapy)を開始することが重要であり、細菌性髄膜炎では「1時間以内」の抗菌薬開始、単純ヘルペス脳炎では「6時間以内」のアシクロビル開始が推奨されている。2022 年に保険収載されたFilmArray 髄膜炎・脳炎パネルは短時間にウイルス、細菌、真菌を網羅的に検出できるマルチプレックスPCRであり、迅速診断による早期の確定的治療(definitive therapy)が期待されている。一方、原因不明の脳炎患者のなかからNMDA 受容体などシナプス関連蛋白や神経細胞表面蛋白を標的とする自己抗体による自己免疫性脳炎があることが報告され、重要な鑑別疾患と認識されるようになった。自己免疫性脳炎は免疫治療に良好な反応を示すことが特徴であるが、免疫療法の遅れが重症化や転帰不良につながることもある。脳炎・髄膜炎の診療においては、神経感染症と自己免疫性脳炎をあわせた診療アルゴリズムの構築が必要と考えられる。

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© 2024 日本神経感染症学会
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