2024 年 29 巻 1 号 p. 32-39
プリオン病は、「プリオン」と呼ばれる正常型プリオン蛋白がなんらかの因子で異常型プリオン蛋白に変換され、この異常型プリオン蛋白が感染性をもち脳内で増殖・沈着し、さまざまな精神症状や運動失調、認知障害などを引き起こす神経変性疾患・神経感染症疾患の一つである。プリオン病の分類は①孤発性プリオン病、②遺伝性プリオン病、③獲得性プリオン病に大別される。分類および疾患名などが年々異なっており、プリオン病の分類や疾患概念の変遷を紹介する。また近年、試験管内で異常プリオン蛋白を増幅する方法が確立され、脳脊髄液や鼻粘膜を用いて異常プリオン蛋白を検出することが可能となってきている。診断基準についても1990 年、1995 年、2009 年、2021 年と診断基準も変遷している。治療については、現時点で科学的に有効性が証明されたものはないが、治療法開発が進行している。2022 年よりプリオン蛋白抗体療法の治験が開始され、2024 年よりsiRNA 療法による国際治験が開始される予定である。教育講演では今までの基礎的な知識を丁寧に講演し、過去から現在までの診断基準・治療法の変遷を基礎的な知識も紹介しさらに令和4年度プリオン病のプリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究班の報告書の最新のデータを加え丁寧に説明する。