2023 年 3 巻 1 号 p. 9-19
(目的)
軽度認知機能低下症(MCI レベル)が長期経過後に認知障害が進行する因子を検討した。
(対象・方法) 対象は3 年以上経過しADASJ で初診時10 点未満の正常レベル10 例、10-16.6 点未満のMCI レベル23 例である。 海馬萎縮(+)はVSRAD-Z 値2.0 以上かRatio5 倍以上の例、脳虚血(+)は脳室周囲或いは深部皮質下白質病変がgrade3 以上例、脳血流低下は疾患特異領域解析3 指標で2 つ以上の異常値例とした。 認知機能項目は、記憶、見当識、言語、行為の4 分類し、各合計点の割合で評価し、認知障害が進行(ADASJ で16.6 以上)した因子を検討した。
(結果) 認知障害進行は、海馬萎縮、虚血性変化、脳血流低下等の有無に関与せず、非活動的生活例に多く、見当識機能を有意に低下させていた。
(結論) 初診時、正常・MCI レベル例の認知障害進行の予防策として、活動的生活により見当識機能を改善させることと示唆されたが、非活動的生活状態が認知障害の進行に寄与しているのか、認知障害の進行の結果としてなのか、さらなる介入研究が必要である。