認知症の多くは加齢に伴って増加する神経変性疾患で、認知機能の低下を主徴とし、頭部外傷リスクを顕著に高める。高齢化の進むわが国では、高齢者数の増加に伴い認知症・認知機能障害患者数も増加しており、認知症患者における頭部外傷発生数も増加していると推計される。認知症・認知機能障害が頭部外傷に与える影響は、受傷リスク、頭蓋内出血リスク、重症化リスクの3点から考えると理解しやすい。認知症・認知機能障害患者は転倒リスク、交通事故リスクが高く頭部外傷受傷リスクが高い。また、脳萎縮により硬膜下腔が拡大しているという解剖学的特徴により、頭部外傷受傷時の頭蓋内出血リスクが高い。さらに、脳萎縮という解剖学的特徴に加えて頭蓋内コンプライアンスが低下しているために、圧がいったん緩衝されなくなると、症状悪化は急速かつ重篤で、重症化リスクも高い。現状では、転倒予防策などが予防介入として講じられているものの、認知症・認知機能障害に特化した頭部外傷における治療介入指針は確立されていない。今後、多角的なアプローチによる治療介入指針の確立が求められている。
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