日本脳神経外科認知症学会誌
Online ISSN : 2436-0937
大脳白質線維の異方性拡散から見た認知機能障害の早期診断
~MR拡散テンソル画像による白質線維路のFA値評価
丹羽 潤今泉 俊雄辺見 賢太郎澤村 結実加城 雄平松村 茂樹
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2024 年 4 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

[目的]MR 拡散テンソル画像(DTI)を用いて大脳白質路で異方性拡散の指標となる異方性比率(FA)を計測し、主観的認識機能障害(SCI)と軽度認知機能障害(MCI)を早期に診断することの可能性を明らかにすることを目的とした。

[症例と方法]症例はもの忘れ外来通院中の記銘力低下を認めた患者である。臨床的認知症尺度CDR から分類した。全例でDTI を撮影し、大脳白質線維の異方性拡散の指標となるFA 値を測定した。FA 値はDTI のカラマップ上で大脳白質線維路(左右鉤状束、左右後部帯状束、脳梁膨大部)の5 か所に関心領域を設置して計測した。

[結果]今回、SCI 19 例、MCI 45 例、AD 37 例が割当てられた。健常群と比較して、SCI 群では左鉤状束の、またMCI 群では右鉤状束のFA 値に有意な低下を認めた。しかし両群ともに後部帯状束におけるFA 値の有意な低下は見られなかった。

[結論]SCI 群およびMCI 群では健常群と比較して鈎状束のFA 値の低下つまり大脳白質における神経線維の構造変化を認めた。DTI を用いて大脳白質の変化を異方性拡散で定量化することで、これまで大脳皮質の変化と同様に認知機能の障害を早期から定量的かつ客観的に評価できうる指標であると示唆された。

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© 2024 日本脳神経外科認知症学会
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