2024 年 4 巻 1 号 p. 1-8
[目的]MR 拡散テンソル画像(DTI)を用いて大脳白質路で異方性拡散の指標となる異方性比率(FA)を計測し、主観的認識機能障害(SCI)と軽度認知機能障害(MCI)を早期に診断することの可能性を明らかにすることを目的とした。
[症例と方法]症例はもの忘れ外来通院中の記銘力低下を認めた患者である。臨床的認知症尺度CDR から分類した。全例でDTI を撮影し、大脳白質線維の異方性拡散の指標となるFA 値を測定した。FA 値はDTI のカラ―マップ上で大脳白質線維路(左右鉤状束、左右後部帯状束、脳梁膨大部)の5 か所に関心領域を設置して計測した。
[結果]今回、SCI 群19 例、MCI 群45 例、AD 群37 例が割当てられた。健常群と比較して、SCI 群では左鉤状束の、またMCI 群では右鉤状束のFA 値に有意な低下を認めた。しかし両群ともに後部帯状束におけるFA 値の有意な低下は見られなかった。
[結論]SCI 群およびMCI 群では健常群と比較して鈎状束のFA 値の低下つまり大脳白質における神経線維の構造変化を認めた。DTI を用いて大脳白質の変化を異方性拡散で定量化することで、これまで大脳皮質の変化と同様に認知機能の障害を早期から定量的かつ客観的に評価できうる指標であると示唆された。