日本脳神経外科認知症学会誌
Online ISSN : 2436-0937
腫瘍摘出術により認知機能障害の改善を得た前頭蓋底巨大悪性髄膜腫の一例
長崎 弘和野上 諒橋本 啓太成清 道久大橋 聡松岡 秀典壷井 祥史
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2024 年 4 巻 1 号 p. 9-13

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抄録

嗅窩部髄膜腫は初期には症状を認めず巨大化して発見されることがある。症例は48 歳女性で、嗅覚障害、視力障害、認知機能障害にて発症した巨大な嗅窩部髄膜腫の一例である。腫瘍の全摘出術を行い認知機能障害の改善を認めた。嗅窩部髄膜腫による進行性の認知機能障害、嗅覚障害、自発性の低下は、アルツハイマー型認知症の初期症状と類似しており、両者の鑑別が必要である。さらに、認知機能低下に伴い患者の医療機関受診拒否の問題が指摘されている。本症例においても症状は出現していたが受診は行われず、最終的に家族による介護が困難となり救急搬送された。受診拒否は、適切な医療介入の遅延をもたらし治療機会を逸するリスクを高める。特に嗅窩部髄膜腫は摘出により症状改善が期待できるため初期段階で鑑別診断を行い治療介入することが望まれる。

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© 2024 日本脳神経外科認知症学会
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