NEUROSURGICAL EMERGENCY
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Print ISSN : 1342-6214
破裂中大脳動脈瘤と脳血管攣縮に対し同時に治療を行った3例の報告
須山 嘉雄中原 一郎松本 省二盛岡 潤小田 淳平鈴木 健也長谷部 朗子田邉 淳渡邉 定克陶山 謙一郎
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2020 年 25 巻 2 号 p. 329-336

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抄録

 脳血管攣縮期にクリッピング術を行うと他の時期と比較し手術成績が悪いことは以前から報告されている.一方,血管内治療によりコイル塞栓術と血管形成術を同時に行った報告は散見され良好な転帰が得られている.今回,我々は脳血管攣縮(cerebral vasospasm: 以下CVS)を合併した中大脳動脈(middle cerebral artery: 以下MCA)破裂脳動脈瘤に対して同時治療を行った3例を経験したので報告する.症例1:60歳女性,1週間前に頭痛を自覚,左上下肢脱力と構音障害を主訴にday 8に来院した.右MCAに最大径8.1 mmの広頚の脳動脈瘤と右MCA水平部およびその遠位にCVSを認めた.来院日にコイル塞栓術と塩酸ファスジル動注および右MCA水平部に経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty: 以下PTA)を行った.瘤頚部が残存しており,day 27にクリッピング術を行い独歩退院となった.症例2:45歳女性,後頭部痛を自覚しday 5に来院した.右MCAに脳動脈瘤および右MCA水平部にCVSを認めた.脳動脈瘤はMCA本幹を挟んで小さな上方成分と4 mmの下方成分より形成されていた.右MCA水平部にPTAを行った後,下方成分にコイル塞栓術を行った.上方成分の破裂も完全に否定はできず,day 36にクリッピング術を行い独歩退院となった.症例3:44歳男性,頭痛と嘔吐で発症しday 3に来院.左MCAに5.3 mmの脳動脈瘤と左MCA水平部にCVSを認めた.Day 6にコイル塞栓術と左MCA水平部にPTAを行った.翌日,失語と右麻痺が出現したが塩酸ファスジル動注を行い改善し,その後独歩退院となった.脳血管攣縮期におけるコイル塞栓術と脳血管攣縮に対する同時治療は有用であった.しかし,MCA瘤では血管内治療では根治しにくいことが多く,2例で段階的治療を行った結果,良好な治療成績を得ることができたので文献的考察を加えて報告する.

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© 2020 日本脳神経外科救急学会

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