2022 年 27 巻 2 号 p. 177-183
症例は20年前に脳室腹腔シャント術を施行された66歳男性.全身けいれんを来して救急搬送された.水頭症と炎症性中枢神経疾患を疑い,シャント圧調整と抗生剤加療を開始したが,25病日と33病日の造影Magnetic Resonance Imagingで脳室は全周性に造影され,35病日にシャントバルブはリフィル不良となった.腰椎ドレーンを留置して水頭症管理しながら感染制御を試みたが髄液所見の改善がみられなかったため,49病日にシャント抜去術を施行した.脳室カテーテルは単純な牽引で抜去できなかったので,軟性鏡を使用して頭蓋内のカテーテルを観察したところ,全長に渡って肉芽や新生血管の関与した癒着を認めた.内視鏡用モノポーラを用いて癒着の剝離及び止血を行い合併症なくシャントを抜去できた.術後長期間経過したシャント機能不全に感染症を併発した症例では脳室カテーテルの閉塞に新生血管が関与している可能性があり,軟性鏡の使用は安全な抜去のために有用な選択肢と考えられる.