NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
透析患者に対する脳外科緊急手術の治療成績
—救命センターにおける連続93例の検討—
前田 拓真宮田 真友子内藤 信晶吉野 暁子田口 裕彦武 裕士郎渡邊 裕輔古峰 弘之竹田 理々子大井川 秀聡栗田 浩樹
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2024 年 29 巻 1 号 p. 20-27

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抄録

 透析患者の増加に伴い,救命センターにおいて脳外科緊急手術を要する透析患者に遭遇する機会が増えている.透析患者における脳卒中のリスクは非常に高いことが知られ,また不均衡症候群や低血圧による転倒・転落頭部外傷も生じやすく,その転帰は一般集団と比較して不良とされている.我々は脳卒中や頭部外傷患者に対し,透析の有無に関わらず血腫量や神経学的重症度で脳外科緊急手術の適応を決定してきた.透析患者に対する脳外科緊急手術の治療成績を後方視的に検討したので報告する.開院からの16年間で,血液透析患者に対して施行した緊急開頭術及び穿頭術93例を対象とした.原疾患は脳内出血:49例(52.7%),くも膜下出血:7例(7.5%),急性硬膜下血腫:15例(16.1%),慢性硬膜下血腫:19例(20.4%),その他:3例(3.2%)であった.全体で頻度の高かった周術期合併症は,術後痙攣発作:12例(12.9%),次いで血腫増大・再出血:11例(11.8%)であった.退院時予後良好(modified Rankin Scale[mRS]スコア:0‒2)・中等度(mRSスコア:3または4)は37例(39.8%)で達成され,死亡退院は25例(26.9%)であった.脳内出血においては,来院時GCS,血腫量,血腫部位が予後因子であった.いずれの疾患においても,手術による救命・予後良好を達成し得た群が少なからず存在しており,透析患者においても血腫量や神経学的所見により手術適応を判断することは妥当と思われた.特に,くも膜下出血,急性・慢性硬膜下血腫,GCS>9または血腫量63 mL未満の脳内血腫に対する脳外科緊急手術はより積極的に考慮すべきである.ただし透析患者の周術期管理においては,術後痙攣発作や再出血など特有のリスクを念頭に置く必要がある.

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© 2024 日本脳神経外科救急学会

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