2024 年 29 巻 2 号 p. 109-115
抗凝固療法中の頭蓋内出血は予後が悪く,適切な中和療法の施行が予後の改善には重要である.本研究では,東京医科歯科大学病院および関連4施設における中和療法の使用経験について後方視的に検討した.2017年1月から2023年9月までの間に72例の急性頭蓋内出血症例(出血性脳卒中39例,外傷性頭蓋内出血33例)に対して中和療法が施行された.最終的に手術加療が32例,保存加療が40例に選択されたが,手術群のうち6例は血腫の増大により手術加療へ変更となった.来院から中和剤投与までの時間は,当初から手術が選択された群で98分,入院後に手術加療へ変更となった群で308分,保存加療群118分であり,手術加療へ変更となった群で有意に長かった.また,はじめに保存加療を選択された群の中で,入院後の出血の増大を16例に認め,出血の増大のない群では投与までの時間が101分であったのに対し,出血の増大を認めた群では308分と有意に長かった.全症例における院内死亡は9例(13%)であった.中和療法の施行に当たっては,来院から早期に積極的な投与を行うことで,有効な止血効果が得られる可能性が示唆された.