NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
抗凝固療法中に発症した急性期頭蓋内出血に対する中和剤の使用経験
阿久津 壮阿部 大数近藤 和樹佐藤 陽人稲次 基希石井 洋介廣田 晋唐鎌 淳玉置 正史早川 隆宣前原 健寿
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2024 年 29 巻 2 号 p. 109-115

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抄録

 抗凝固療法中の頭蓋内出血は予後が悪く,適切な中和療法の施行が予後の改善には重要である.本研究では,東京医科歯科大学病院および関連4施設における中和療法の使用経験について後方視的に検討した.2017年1月から2023年9月までの間に72例の急性頭蓋内出血症例(出血性脳卒中39例,外傷性頭蓋内出血33例)に対して中和療法が施行された.最終的に手術加療が32例,保存加療が40例に選択されたが,手術群のうち6例は血腫の増大により手術加療へ変更となった.来院から中和剤投与までの時間は,当初から手術が選択された群で98分,入院後に手術加療へ変更となった群で308分,保存加療群118分であり,手術加療へ変更となった群で有意に長かった.また,はじめに保存加療を選択された群の中で,入院後の出血の増大を16例に認め,出血の増大のない群では投与までの時間が101分であったのに対し,出血の増大を認めた群では308分と有意に長かった.全症例における院内死亡は9例(13%)であった.中和療法の施行に当たっては,来院から早期に積極的な投与を行うことで,有効な止血効果が得られる可能性が示唆された.

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© 2024 日本脳神経外科救急学会
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