2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16118
本研究は,気候変動下における水稲の作付時期(田植え日)の変化が,各地域の農業用水の水需給バランスに及ぼす影響を評価した.全国77地点の利水基準点と作柄表示地帯を対象に,田植え日を最大±5週間まで変更し,各田植え日の収量と水需給バランスをプロセスモデルで計算した.収量を増加する田植え日の選択が水需給バランスを改善する「調和型」は38地点,悪化する「競合型」は37地点で見られた.基準田植え日に対して,収量最多となる田植え日の選択が水需給バランスに及ぼす影響は,田植え日の変更に対する収量と水需給バランスの関係性で説明できた.すなわち,調和型の地域では,収量を増加する田植え日が水需給バランスの面からも選択しやすい一方で,競合型の地域では水需給バランスの悪化により,その選択が阻害される可能性を示した.