栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
松茸に関する生化学的研究 (第10報)
松茸変敗菌のヒスチジンおよびフェニルアラニンの脱炭酸
井上 伊造
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1964 年 17 巻 3 号 p. 148-156

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抄録

中毒松茸より分離した菌を, 滅菌した良質松茸に移植して腐敗せしめた松茸汁を, SH系マウスに投与した際, 滅菌松茸汁, 生松茸汁共に中毒症状を示した菌株のうち特に死亡率の高く, 強い毒性を認めたNo. 64, No. 90株はもちろん, 一部は回復し, 生存数をみたが, 滅菌松茸汁および生松茸汁共に死亡することを認めたNo. 75, No. 102株についての脱炭酸能はいずれも, ヒスチジン, フェニルアラニンの両アミノ酸の脱炭酸能を有することを認めた。このことはこれら菌株はヒスタミン, およびフェニルエチルアミンを共に生成することを推定した。なお両アミノ酸の脱炭酸能の強い菌として, No. 81株を認めたが動物実験による中毒試験は今後において行ない, 検討するものである。
また両アミノ酸の脱炭酸はしないが, 一方のアミノ酸に対する活性の強い菌株もあり, 特にヒスチジンの脱炭酸能の強い菌株が松茸に多く付着していることを認めた。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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