情緒的ストレスによるK選択の減少の機構を検討するために, ラッテに回避条件づけを行ない, 尿中に排泄されるKおよびNa量を炎光光度法によって測定した。
実験期間は, 対照期・15, ストレス前期 (条件づけ) ・10, ストレス後期 (消法) ・10, 対照期・15日の50日間である。全実験期間中, 一定のKおよびNaを含む基本飼料を自由に与え, また条件づけには, ブザーと電撃を1日20回与えた。
被験動物には, 両ストレス期に著しい不安行動がみられ, 同時に, KおよびNaの尿中排泄量の急速な減少が認められた。
この間に, 摂食量は減少し, 体重増加は, 一時停滞した。
KおよびNaの摂取量は, 摂食量の減少に伴って減少したが, 尿中排泄量は, さらに著しい減少を示した。すなわちKは, ストレスにより直ちに減少しはじめ, その後ほとんど回復しなかった。Kの摂取量に対する排泄率は, ストレス直後, 急速に19%減少して, 最少値を示しストレス後の対照期まで減少しつづけ, その後わずかに回復した。
Naの尿中排泄量は, 両ストレス期に, Kに比してさらに著しく減少し, その後ほとんど回復した。Naの摂取に対する排泄率は, ストレスにより急速に減少し (32%), 後期にも減少をつづけ, その後回復して, ストレス前の値を上まわった。
K排泄率に対するNa排泄率の比は, 両ストレス期に減少し, その後は回復して著しく増加した。すなわち排泄の減少は, KよりNaにおいて大であった。
KおよびNaの排泄率の減少は, 比較的急速に現われたが, その減少率は, あまり大きくなかった。
前報において認められた, 情緒的ストレスによるカリウムの選択量の著しい減少は, 情緒的ストレスによってカリウムの尿中排泄が減少する結果と考えられる。またKおよびNaの排泄率が共に減少した事実から, 本実験の結果は, G-A-Sとは関係ないものと考えられる。
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