栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
弗素中毒要因に関する研究 (第2報)
飲料水中の諸要因について
藤江 奏
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1966 年 19 巻 4 号 p. 264-267

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抄録

1) 弗素中毒発生要因として, 飲料水中の弗素以外の因子を追究するため, 斑状歯発生地帯の島根県美濃部美都町および同県鹿足郡六日市町の中学校生徒を対象に, その飲料水を分析し, 同時に毛髪中の弗素を測定して体内蓄積の状態をしらべた。
2) 斑状歯の発生率が美都町11.63%, 六日市町41.56%であるのに対して, 飲料水中の弗素含量がそれぞれ0.56p. p. m. および0.26p. p. m. と逆の結果を示したのは前報と同じであったが, 弗素のほかに, 塩素, 硬度およびカルシウムにも大きな差異がみとめられた。すなわち, 美都町においては六日市町に比し, 塩素は約3.8倍, 硬度およびカルシウムにはそれぞれ約2.9倍という高い含量を示した。
3) 飲料水中の弗素含量が0.30p. p. m. 以上になるとすべて斑状歯症状を呈していたが, 0.30p. p. m. 以下では硬度値およびカルシウム含量が高いほど, 斑状歯の出現が抑制されていた。しかし, 塩素は美都町において多量検出されたにもかかわらず, 斑状歯出現とは全く無関係であることがみとめられた。
4) 毛髪中弗素含量は斑状歯保有者に多量検出され, またカルシウム含量の高い場合には低い値を示していた。したがってカルシウムが弗素と結合して体内への吸収を妨害しているものと推察された。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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