栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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ビタミンCに及ぼす紫外線の影響 (第2報)
野菜・果実汁のビタミンCの変化
北川 雪恵
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1968 年 20 巻 6 号 p. 461-466

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抄録

12種の野菜・果実汁に紫外線および可視光線を照射, (距離10cm, 2hr) して, そのVCに対する影響を検討して次の事項を認めた。
野菜・果実汁に対する紫外線の影響は, その食品の酸化酵素などによる酸化作用の影響の多少により異なる。
(1) いずれの野菜・果実も固体中では総C中還元型Cが大部分をしめているが, これらを搾汁した試料は, 還元型Cが大部分をしめるものと, 搾汁中に酵素酸化を激しく受けて酸化型Cが大部分をしめるものとに大別される。
(2) 還元型Cが大部分をしめ, 空気中で比較的酸化されにくい汁 (大根, 夏みかん, トマト, 玉葱, さやいんげんの各汁) を暗所放置すると, そのVCは比較的安定しているが, 紫外線照射によっては, 総C, 還元型Cともに減少し特に還元型Cは激減する。これらの食品汁に対する紫外線の影響は, AsA溶液の場合よりも著明である。
(3) 還元型Cが大部分をしめ, 空気中で比較的酸化されやすい野菜・果実汁, すなわち酸化が漸次進行する食品汁 (キャベツ, ほうれん草) では, これを暗所放置する間に酵素酸化が急速に進行して, 還元型Cの大部分が酸化型Cに変化する。このために紫外線による影響は前 (2) 項の食品汁に比して少ない。すなわち酸化酵素による酸化の方が急速で影響が大きいために, 結果としては紫外線による影響は小さく表われたものと考えられる。特にほうれん草汁は紫外線の影響が少ないが, これは多量に含有される葉緑素が紫外線の透過を防ぎ, VC酸化の抑制に有効に働くことも一因をなしていると考えられる。
(4) 酸化型Cが大部分をしめる野菜・果実汁すなわち酸化酵素の激しい作用により, 搾汁と同時に瞬間的に酸化が進行してしまう食品汁 (じゃが芋, さつま芋, にんじん, きゅうり, ももの各汁) では, 暗所放置してもそのVCは殆んど変化せず, 紫外線照射によっても殆んど影響を受けない。これは前報のDAsA溶液の場合と同様の傾向である。
(5) 野菜・果実汁に対する可視光線の影響を検討するに, 還元型Cが大部分をしめ, 空気中で酸化されにくい野菜・果実汁 (大根, 夏みかん, トマト, 玉葱, さやいんげん汁) およびキャベツ汁には明らかにその影響が認められるが, 酸化型Cの多い食品汁およびほうれん草汁には殆んど影響が認められない。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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