栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
食品中の硝酸塩によるかん内面スズ異常溶出に関する研究 (II)
トマトジュースかん詰のスズ異常溶出量とpHの関係
岩本 喜伴宮崎 正則国里 進三前田 ゆう子堀尾 嘉友小村 祥子
著者情報
ジャーナル フリー

1968 年 21 巻 1 号 p. 50-54

詳細
抄録

100%果汁であるトマトジュースに天然物中に含まれている硝酸塩, 硝酸カリウムを添加したかん詰を製造し経時的に開かん測定を行ないスズの異常溶出問題を検討した。
1. スズの溶出は硝酸カリウムを硝酸塩として添加した場合には急速に進行するが天然物中に含まれている硝酸塩添加の場合には若干遅延し徐々に進行する。
2. 天然物中に含まれている硝酸塩でもオレンジジュースに認められたのと同様にスズの異常溶出の主要原因であり硝酸塩量とスズ溶出量との間には明らかな相関が認められた。
3. 天然物中含まれている硝酸塩によるスズの異常溶出はpHが低いほど早期に起こりpHが5附近になるとスズの溶出速度は遅延する。 また硝酸塩の減少はスズ溶出量と関係がありpHが低いほど急激に減少しpHが5附近では減少は遅延する。
4. 各pHごとのスズ溶出量の総和の平均値を求めるとpHが3-5の範囲内ではpHとスズ溶出量との間に明らかな逆の相関が認められた。
5. 果実, そ菜類かん詰では, 使用水中の硝酸塩量のみならず原料中の硝酸塩含量にも注意が必要でありトマトジュースかん詰の場合にはpack前のジュース中の硝酸性窒素量は3ppmが望ましい。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top