栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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牛乳のトコフェロール類の分布ならびにその抗酸化作用
津郷 友吉菅野 長右エ門
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1969 年 22 巻 9 号 p. 587-600

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抄録

牛乳におけるトコフェロールの含量, 分布, その抗酸化作用について, 著者らの研究を中心として紹介した。
油脂および油脂を含む食品に対する抗酸化剤の添加は, 油脂の自働酸化によってひき起こされるビタミンやその他の必須栄養素の破壊および異臭の発生や人に対して毒性のある酸化生産物の生成を防止することに意義があるのであって, 添加した抗酸化剤自身が食品の消費対象である人に対しわずかでも有害のおそれがある場合は全く問題にならないことはいうまでもない。 その点トコフェロールのような天然の抗酸化剤の存在意義がある訳であるが, 天然の抗酸化剤はその活性および経済的な点で合成抗酸化剤に劣る欠点がある。 理想的な抗酸化剤とは, (1) 0.01-0.001%の低濃度で活性が強いこと, (2) その抗酸化剤およびその酸化生産物は全く毒性がないこと, (3) 長期間の貯蔵あるいは加熱後でも食品に特殊の色, におい, 味をつけないこと, (4) 基質と容易にまじりあうこと, (5) その抗酸化作用は油脂においてばかりでなく, 油脂を含む食品にも移行性があること, (6) 容易に入手できるものであって, それを使用した食品の価格にあまり影響をおよぼさないこと, (7) それを用いた食品から容易に検出, 同定, 定量できるものであることなどの条件に適合するものと考えられ, このような条件を満たす抗酸化剤の開発が期待されるのである。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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