栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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納豆製造時におけるTCA可溶性区分のイオン交換クロマトグラフィおよびゲル濾過による分画
納豆製造過程における大豆たん白質の変化 (第3報)
草野 愛子
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1972 年 25 巻 1 号 p. 21-24

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抄録

納豆製造過程におけるペプチドの変化を検索するため原料大豆, 蒸煮大豆, 菌の種類を異にし, かつ実験的に製造した納豆2種および市販納豆について, そのTCA可溶区分をDowex 50W-X2によって吸着部と非吸着部とに分画し, さらに吸着部についてSephadex G-10によるゲル濾過を行なった。
(1) TCA可溶区分の窒素化合物のうちDowex 50W-X2に吸着されるものは78-93%でその大部分を占め, その割合は原料大豆, 蒸煮大豆で低く, 納豆では高かった。非吸着部である比較的高分子のペプチドは2~9%に過ぎなかった。したがってTCA可溶区分のペプチド検索には吸着部を用いることが適当であると考えられた。
(2) Dowex 50W-X2吸着部のSephadex G-10による溶出パターンは原料大豆と蒸煮大豆が, No. 6納豆と市販菌納豆がそれぞれきわめて近似し, かつ前者は2個のピークを, 後者は3個のピークを持って, 明らかに異なるパターンを示した。市販納豆は市販菌納豆とほぼ同様な傾向を示したが若干相違する点もあり, 製造条件の相違によるものと考えられた。
(3) 検討の結果, 溶出パターンのピークIは分子量1,000前後までのペプチド, ピークIIはジペプチド, ピークIIIはほとんどアミノ酸によるものであった。
(4) 以上の結果から第1報および第2報において指摘した納豆製造過程におけるTCA可溶区分のペプチドの顕著な増加を分子量の大きさによってみれば, 原料大豆および蒸煮大豆中のDowex 50W-X2非吸着部すなわち比較的大きな分子量のペプチドの減少とDowex 50W-X2吸着部すなわち比較的小さな分子量のペプチド, 特にジペプチドの顕著な増加である。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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