1972 年 25 巻 1 号 p. 28-37
肉加工の際使用される発色促進剤 (Na-AsA, Na-iso-AsA, ニコチン酸, ニコチン酸アミド, GDL) および肉に本来含まれている主な金属イオン (Mg2+, Ca2+, Zn2+, Fe2+, Fe3+) が, 発色剤として作用する亜硝酸塩の挙動にどのような影響を及ぼすかについて調査を行ない, つぎのような結果を得た。
(1) Na-AsA, Na-iso AsAおよびFe2+は, それぞれ単独で亜硝酸塩を分解する作用を示したが, 特にFe2+は, pH 5.0のみならずpH 6.0においても亜硝酸塩をかなり分解する作用のあることが認められた。
(2) Na-AsAが共存する場合, 保持および加熱処理によって, 供試したいずれの添加物も亜硝酸塩の分解を促進する作用を示し, この作用はpH 6.0よりpH 5.0において顕著であった。この分解促進作用は, Fe2+とFe3+において最も著しく, pH 6.0においてもかなりの効果が認められた。
(3) Na-AsAとNa-iso AsAを比較したところ, Na-AsAの方が亜硝酸塩分解作用は大で, 特に4℃で72時間保持後加熱した場合にこの差はさらに増大した。
(4) ニコチン酸アミドの作用効果について, さらにワールブルグ検圧装置を用いて検討を行なった結果, Na-AsAが共存する場合, ニコチン酸アミドは亜硝酸塩の分解を促進すると共に, その還元分解によって生ずる酸化窒素の発生量を増大する作用を示すことが認められた。
この実験結果から, ニコチン酸アミドが肉製品の発色に必要な酸化窒素の発生を促進する作用を有することが, ニコチン酸アミドが発色促進効果を現わす一因をなすものと推論した。