1972 年 25 巻 5 号 p. 410-414
体たん白の持つ易動性が臓器によって定まるのか, その臓器を構成するたん白によって定まるのかを明らかにするために, 筋肉と肝臓に存在する三つの酵素たん白を指標として実験を行なった。30日間の無たん白飼育で, 肝臓と筋肉のたん白量, 肝臓, 筋肉のコハク酸脱水素酵素活性が8日目まで指数関数的に減少する傾向が認められた。
次に8日間の無たん白飼育による, 三つの酵素活性の変動を検討した。コハク酸脱水素酵素では, 肝臓で活性の低下が認められたが, 筋肉では変化はなかった。ホスホリラーゼでは, 肝臓では変化はなかったが, 筋肉では減少する傾向を認めた。アルドラーゼでは筋肉, 肝臓では変化はともに認められなかった。この結果より, 酵素たん白の易動性は必ずしもその酵素の存在する組織のたん白代謝の特異性のみによるものではないことが示唆された。