栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
腎疾患における食事療法の適応と限界
平田 清文
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1973 年 26 巻 7 号 p. 401-411

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抄録

腎疾患治療における食事療法の役割は, 他の保存療法および積極療法の進歩とともに, 有効かつ重要な治療法として再認識される段階を迎えている。 著者は腎疾患の食事療法の問題点として, 治療食の適応と限界に関する諸知見を概説し, 下記の結論をえた。
1) いわゆる腎炎食とネフローゼ食は, 減塩を主として前者ではたん白質制限, 後者ではたん白質増加に向かう食事であり, それぞれ腎炎 (急性および慢性) およびネフローゼ症候群に適応される。 これらの治療食はいずれも基礎疾患の経過および回復過程に応じて細分されているが, 腎IIA食は腎機能障害軽度ないし中等度の腎不全患者にも適応される。
2) 急性腎不全食は, 厳重な水電解質管理とたん白質制限のもとに高熱量を供給することにより, 急性腎不全の回復を円滑にする食事と考えられ, これに早期の人工透析療法を併用すれば, さらに効果的な治療成績が得られるであろう。
3) 慢性腎不全食は, 高窒素血症の改善, 尿毒症の予防および治療, 患者の延命効果などにおいて有効であるのみでなく, 慢性腎不全の進行または増悪に対して防止的効果が期待される。 ただし急速進行性腎不全および終末期腎不全に対しては, 人工透析療法を併用しない限り, 治療食の効果は限界に達して無効になる。
4) 透析食は, 人工透析療法に低たん白高熱量食を併用することにより, 透析治療の回数を減らすことができる。 これによって, 透析治療に要する諸経費は軽減されるのみでなく, より多くの終末期腎不全患者が救命される機会を提供している。 週1回の腹膜灌流法と透析I度食の併用は, 年余に及ぶ治療経験により, 長期の維持透析療法に適した治療法であることが明らかにされた。
5) 腎不全用の低たん白高熱量食の作成には, 治療用の特別食品の研究開発とその実際的応用が必要である。 本邦のこの領域における開発食品を紹介し, あわせて低たん白高熱量食による腎不全の治療理論について言及した。

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