抄録
豆腐を作り, カビの菌糸で被覆し, しょう油諸味漬けにして乳腐を作り, その製造工程中における一般成分変化, アミノ酸, および揮発性有機酸の消長を追求した。
一般成分は常法により水分, 脂質, 塩分, 灰分, 総窒素, アミノ態窒素, 還元糖, 水素イオン濃度の測定を行なった結果, 乳腐の熟成にともなって水分は減少し, 還元糖, アミノ態窒素は増加し顕著な差を示したが, 他の成分についてはほとんど変化が認められなかった。
アミノ酸の定量は, アミノ酸アナライザーによるワンカラム溶出法により行なったところ21種類のアミノ酸が同定された。 豆乳, 乾燥豆腐ではリジン, γ-amino butyric acid等の数種類のアミノ酸がごくわずかしか認められなかったが, 諸味づけに熟成した乳腐ではアスパラギン酸, グルタミン酸等21種類が多量に検出された。 アルギニンとオルチニンは市販乳腐に比べ顕著な差が認められた。
揮発性有機酸の定量は, ガスクロマトグラフを用いて行なった結果, ギ酸, 酢酸, プロピオン酸, アセトイン, n-酪酸, i-酪酸, およびi-バレリアン酸の7種類が同定された。 ギ酸, 酢酸は製造工程中のすべてに検出されプロピオン酸, i-酪酸は乳腐および熟成中の諸味に, アセトインは塩漬豆腐に, i-バレリアン酸は乳腐に, n-酪酸はカビ豆腐, 塩漬豆腐, 乳腐および熟成中の諸味に認められた。