抄録
1) ブドウ球菌Staphylococcus epidermidis IFO 3762は, 食塩濃度12%までの培地に増殖可能であった。
2) 本菌はコール酸塩0.1%を含む培地ではまったく正常に増殖するが, 0.5%以上になると増殖はかなり阻害された。
3) コール酸塩と食塩が共存する場合, 本菌の耐塩性は著しく低下した。たとえばコール酸塩0.1%-食塩6%, コール酸塩0.2%-食塩4%で本菌の増殖は完全に阻止された。このようにコール酸塩と食塩は本菌に対して強い共力作用を示し耐塩性を低下させるが, その作用は静菌的であった。
4) コール酸塩を含まない培地で本菌を増殖させ, 対数期中期に達したときに食塩濃度15%になるように食塩を添加した場合, 本菌の増殖は阻止されるが菌の急激な死滅はみられなかった。しかし, コール酸塩を0.2%含む培地で増殖させた菌を同様に処理すると, 菌の急激な死滅が観察された。
5) 本菌にコール酸塩や食塩をそれぞれ単独にあるいは両者を併用して作用させたところ, 紫外部に吸収を持つ物質の漏出がみられた。とくに両者を併用して作用させた場合, 作用初期に著しい漏出現象が観察された。