抄録
ミトコンドリア懸濁液に紫外線を照射すると, 過酸化脂質の増量や呼吸鎖の脱共役が観察されるが, これに抗酸化剤としてのグルタチオンがいかなる影響をあたえるかを検討した。
1) 11.2×106erg/cmcm2量の紫外線照射をうけたミトコンドリアは電顕的に明らかに膨潤がみられ, KCl-Tris緩衝液中でも520nmの吸光度の低下をみた。しかし, グルタチオンを添加すると, 膨潤ミトコンドリアの収縮が観察された。
2) 11.2×106erg/cmcm2の照射をうけたミトコンドリア懸濁液にグルタチオンを10-5mol加えて室温に10分間放置すると, 照射にもとづくRCR, ADP/Oの減少やstate 4の開放などが回復し, また, 過酸化脂質の減少がみられた。
以上の紫外線照射によるモデル実験系より, 細胞内に普遍的に存在するグルタチオンが抗酸化作用を有することを, ミトコンドリアの形態的観察や生化学的検討から確認しえた。